盗ったやつ返せー涙 怒
なので、コミュニケーション能力が低かったり、人とうまく付き合えない人は、社会的に孤立したり、孤独感を感じてしまうケースが多いんです。デンマークの自殺者数は少なくなく、孤独はよく問題として取り上げられ議論されています。
――ということは、デンマークの社会システムに対して異を唱える人も多いんですか?
もちろんいないわけではありませんが、10人中、8、9人が賛成しているというデータがあります。つまり、もちろん孤独の問題などもありますが、それでもほとんどの国民が社会制度に満足して、少なくともある程度納得した上で、税金を納めているんですよ。
――社会制度が良いか悪いかは置いておいて、人々が社会に満足していることは幸福度と密接に関わっていると思います。
デンマーク人のもっとすごいところは、「国に払った対価が自分に返って来なくてもいい」、さらにその前提で「それでもこのシステムから恩恵を受けている」と国民が心から思っていること。誰かのためになり、政府が自分の将来の不安を取り除いてくれることは、デンマーク人の幸福感において大切なことなんです。
―03―
ワークもライフも。
幸せのカタチはひとつじゃない
――「経済発展すると幸福度が下がる」なんて言われることがあります。たとえば、日本では幸福な国としてよくブータンが取り上げられますが、経済規模があまりに違いすぎて参考にならない。でもその点、先進国のデンマークは福祉国家でいて、「週37時間労働まで」という法律があるほど労働時間も短い。それなのに一人当たりの名目GDPは日本の約1.7倍。どうしてこんな豊かなんでしょうか?
直接的な答えになるとはわかりませんが、デンマークの人々は仕事に目的を見いだしている人が多いからだと思います。
たとえば、私自身も7年間勤め上げた会社を辞めて、幸福について研究するこの会社を3年前に立ち上げました。もちろん給料はかなり減りましたが、以前よりもずっと充実感があります。研究でも結果が出ていることですが、人は生きるためではなく、もっと意味のある何かのために働くことで、「長期的な幸せ」を感じる生き物なんだと思います。
――なるほど。僕は今まで、税率が高いと仕事の意欲が下がると思っていたんですが、むしろ、お金が労働の目的にならないがゆえに、仕事に何らかの意味を見いだして、パフォーマンスが向上する。さらには幸福度も上がる。そういうロジックもあり得るのかもしれません。
面白い視点ですね。その可能性は十分にあり得ると思います。そして、労働時間が少ないという話、ワークライフバランスについて言えば、仕事以外の時間にもやりたいことがあるわけです。趣味だとか、家族との時間だとか。もちろんデンマークの人々は仕事への意欲は高いんですが、それは勤務時間中だけのことですよね。
――でも、何かを本気で成し遂げたかったら、何かを我慢してでも、そこに時間を投資すると思うんです。なので、平日17時にカフェのテラスでビールを飲む人たちを見ると、「ホントに仕事する気あるの?」ってどうしても思っちゃって。
これは僕が日本人だからなのかな……でも実感としてもデンマーク人は豊かだし……この国はどうなっているんですか?(笑)
あははは(笑)。たしかに「長期的な幸せ」は仕事以外では達成するのは難しいとも言えます。ですが、「短期的な幸せ」だって重要です。「ワーク」以外の「ライフ」の時間もまた幸福感をもたらしますし、仕事以外の時間も楽しめているからこそ仕事の質も高まることだってありますしね。だからデンマーク人は仕事が終わればすぐに切り替えて、リラックスして自分の時間を楽しもうとするわけです。
――幸福感に影響を与える様々な要因があると理解した上で、いいバランスをとること。それが幸せになるには大切なことで、デンマーク人はそれに長けているんだと思いました。
最初に「幸せには答えがない」と言ったのはそういうことです。バランスも何対何が一番幸せになれる比率だとかもありません。しかも、幸せって主観的な感情だから、捉えどころがない。デンマーク人である私が研究をしても、まだよくわからないんです。それでも、デンマークのように幸福度の高い社会やコミュニティを作ることはできます。